4月に訪問したネパールでは、最後にカトマンズを発つ際に、空港閉鎖のインシデントに遭遇しました。
ネパール航空バンコク行き午前11時のフライトに搭乗予定でした。出発時刻の3時間前の午前8時に、タクシーで空港に到着しました。タクシーを降りると、大勢の旅行客でごった返しています。ずいぶんと賑やかな空港だなと思っていたら、どうも様子がおかしい。
空港建物入口にセキュリティーゲートがあるのですが、そこへ人が流れて行っていないのです。ゲートが閉まっています。どーなってるの? 旅客の皆さんの表情も、どこか険しい。
たまたま通りかかった空港職員とおぼしき人に尋ねてみると、驚愕の答えが返ってきました。
「昨晩22時に、マリンド航空機が滑走路でオーバーランし、以降ずっと空港閉鎖になっています。再開がいつになるかは分かりません」とのこと。ぎゃーーー。
全然、知らんかった。朝、宿をチェックアウトする際に、フロントの人は何も言っていなかったし、タクシーの運転手さんも何も言っていなかった。空港閉鎖って、大ニュースのはずたよね!?!?
さて、どうしよう。空港に着いたとはいっても、空港建物内には入れておらず、広い軒下部分に、大勢の旅行客がごった返しいます。航空会社のカウンターも、飲食店もトイレも、何もありません。もちろん空調無し。暑い。ネパールルピーの現金はほとんど使いきってしまっていて、街に戻るタクシー代も持っていない。銀行ATMも無い。
仕方なく、手持ちのスマホで、情報検索。オーバーラン事故の詳細と空港再開の見通しについて、英語で検索するものの、なにもヒットしない。死傷者が出たのか、機体爆発したのか、何も判らない。ここは国際空港なのに。どういうこと?
空港建物入口のドアには、オーバーラン事故にまつわる張り紙掲示もアナウンスも、皆無。出発便フライト状況一覧は、小型テレビに表示されてはいるものの、DELAYとかCANCELLEDの表示は一切なし。あたかも、何も異常が無いかの様。航空会社のカウンターが無いので、問い合わせも、便振り替えなどの手続きも、一切できない。
利用予定のネパール航空のバンコク行きは、デイリーではなく週3便のフライト。もし今日乗れなければ、最短でも明後日になる。しかもネパールはタイと同じく、4月中旬がお正月で、いまが超混雑シーズン。明後日のフライトにだって、乗れない可能性が大きそう。いったい、いつまでここに足止めを喰うんだろう。
かと言って、国際便が飛んでいる他の街まで車で行って、ネパールを離れるのも無理。
ネパールにはカトマンズにしか国際空港は無い。道路事情が劣悪で、平均時速20㎞以上出せる道路が、そもそも無い。
もうこれは、観念して待つしかありません。
周囲の人たちは、台車カートやハードスーツケースの上に、腰かけていました。
私は椅子がわりなるものを何も持っていなかったので、手持ちの空のコンビニ袋を床に敷いて、その上にあぐら座りしました。周りに、床に直接座り込んでいる人はいませんでしたが、見た目なんぞに構っていられません。体力温存が最優先です。
温存すべきものがもう一つ。スマホのバッテリーです。一通り状況確認が終わったところで、電源をきりました。夜まで待って、街へ戻って宿探しをしないといけない事態になったら、スマホは必須になります。
あらためて辺りを見回してみると、皆さん長時間の待ちを覚悟しています。
旅慣れた風情の何人かは、厚い本を読みふけっていました。
なるほど。
通常、ヒマつぶしと言えばスマホいじりですが、今はそれが許される状況ではない。たからアナログの紙の本を読むんですね。
チャレンジなエリアへの旅では、リスク対応用品として、紙の本1冊を荷物の中に入れるのが、良いようです。
たまたま隣にいた10人ほどのフランス人団体客さんがいました。交代で荷物版をしながら、あちこち歩き回って、情報収集しているようでした。そして、もしかしたら昼過ぎに空港再開するかもしれない、と教えてくれました。
そして午前11時半、突然何の前触れもアナウンスもなく、建物入口のセキュリティーゲートが開き、空港再開となりました! 結局、待ち時間は3時間半のみで済みました。
搭乗予定便が、カトマンズ空港ベースのネパール航空だったのが、幸いしました。
外国系の航空会社の便が、どれも軒並み12時間もの遅延になる中、私のフライトは4時間半遅れのみで済み、何とかその日のうちにバンコクへ戻れました。
帰国翌日に知った報道では、こうなっていました。
4月19日22時ころ、マレーシアのLCCマリンド航空の機体がクアラルンプールに向け、離陸のため滑走路上で加速を始めたところ、異常を知らせる計器の警報が鳴り、急遽離陸を取りやめ、緊急停止しました。機体は滑走路をオーバーランし、空港外の草むらに突っ込み、ようやく停止しました。幸い乗員乗客は全員無事で、機材に目立った損傷もなかったのですが、一歩間違えれば大惨事となる重大インシデントでした。結果、空港は14時間閉鎖の大混乱となりました。