ヒデヨのジョムティェンビーチ便り

バンコクの南東150km、パタヤの南5kmに位置するJomtien Beachでロングステイしています

週末のマヒドン大学コンサートホールにプレームご老公様お出まし

バンコクの西の郊外サラヤ地区にあるマヒドン大学の、音楽カレッジ内にあるプリンスマヒドンホール Prince Mahidol Hall へ、タイ交響楽団 Thai Philharmonic Orchestraの定期演奏会を聴きに行ってきました。

 

ホールについての説明は、こちら。1年前に行った際の投稿です。

jomtien.hatenablog.com

 

今回、近くのカフェで昼食を摂り、その後ホールに向かって歩いていったところ、珍しい光景に遭遇しました。

 

ホール通用口の車寄せに、1台のワゴン車が止まりました。すると、大勢の会場係員が集まってきました。どうやらVIPが到着したようです。車の中から、小柄で高齢の男性がごくゆっくりと降りてきました。腰が曲がっており、本当に小さく見えます。10人くらいの付き人が周りを囲んでいます。5人位の取材カメラマンが、車から降りる姿を写真に収めています。杖は使わずに、SPの男性の肘を支えにして、大変ゆっくりと建物の中に向かいます。

 

隣にいた友人が「あの人、知ってる。プレーム枢機卿様だよ」と教えてくれました。

 

エッ、あのプレーム様!?  タイの政治情勢にさほど詳しくない私でも、その名前は知っています。1980年代に首相を務め、一昨年に前国王様が崩御された際には、その代理として摂政を務められた方です。まるで、「あそこにおわずお方が、水戸のご老公様であらせられるぞよ」と言われたようなものです。王室の方ではないので、周囲が皆ハハーッとひれ伏す訳ではありませんが、気分はハハーッでした。タイ王国の現代史に名を刻んだ人物が、今目の前を動いているという状況に、私は勝手にテンションが上がってしまいました(笑)。

 

プレーム様 Prem Tinsulanonda เปรม ติณสูลานนท์ は、御年97歳。

王室、軍、政府、国民のいずれからも信頼が厚く、国の最高実力者とされている人物です。

プレーム・ティンスーラーノン - Wikipedia

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ただVIPだからといって、周囲はものものしい雰囲気ではなく、むしろ和やかです。

プレーム様はピアノがお好きで、数年前まではこのマヒドン大学へ、毎週ピアノの練習に来ていたそうです。またこのホールでは、毎年8月のプレーム様のお誕生日に合わせて、祝賀演奏会を開いているそうです。

General Prem’s 96th Birthday Piano Concert

 

大学側は、いつものお出ましということで、応対には慣れているのでしょう。よくぞまたお出ましくださいました、という暖かな空気でした。そして30メートルほどの距離を2分くらいかけてゆっくりと歩き、控え室に入っていかれました。車椅子で移動すれば簡単で楽に済むのでしょうが、あえてご公務として歩いておられたわけで、実に頭が下がります。

 

 

この日の演奏会自体は、いつもながら素晴らしかったです。ブラジル人指揮者の叙情的かつ躍動感あふれる指揮ぶりは、実に見事でした。

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この定期演奏会では、最後に指揮者及び客員演奏者に対する花束贈呈式が行われます。プレゼンターは大抵、スポンサーとなっている企業や銀行のお偉いさんが務めます。しかし今回は、プレーム様がプレゼンターでした。会場に名前がアナウンスされると、どよめきが起きました。

 

会場の後方から、通路をゆっくりゆっくりと歩いて、先方のステージへ向かわれます。壇上に上がるや否や、それまで曲がっていた腰をしゃんと伸ばし、年齢を感じさせない快活さを印象づけ、笑顔で花束贈呈と写真撮影に臨んでおられました。97歳でこのご公務をこなされるとは、本当に感嘆です。

 

 

すべてのプログラムが終了したので帰ろうと、会場横の出口へ向かっていくと、ちょうどプレーム様が帰る場面に遭遇しました。ワンボックスカーが横付けされ、お迎えの受け入れ準備をするのに、少し時間がかかっているようです。プレーム様は、出入口ドアの脇で椅子に座り、車の準備ができるのを待っておられました。

 

 

VIPがドアのところにいるのに、一般人が通わけにはいきません。私を含め、帰る客が30人ほどドアの手前に溜まり始めました。すると係員の1人が、「ドアを通っても大丈夫ですよ。ここから外に出てください」と案内誘導を始めました。それで、1人ずつドアを通って外に出て行きました。ドアを通る際、至近距離2メートルでプレーム様のお顔を拝見することができました。

 

ありがたや、ありがたや。

 

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この高齢のご老体にスーツを着せて公務をしていただくのは、正直いたたまれない印象を持ちました。ただ、国民の尊敬を一身に集めているというお立場上、文字通り骨身を削って、臨んでおられるのでしょう。どうか健やかで長生きしていただきたいものです。